木曜日の貴公子と幸せなウソ
その表情の意味はわからない。
私が本気で先輩を想っていた事を知り、自分が遊びだった事の罪悪感からくるものなのか、それとも他に別の意味があるのか……。
「先輩とケータイの機種がお揃いだった事も、お揃いのストラップを買ってもらえた事も、他の人から見たら些細な事かもしれない。だけど、私にとっては本当に大切な事だったんです。私は先輩が校内一の人気者だから好きになったんじゃない。先輩が優しく笑ってくれるから……。その笑顔が大好きだった」
「……」
「私は本気でしたよ。好きで好きで仕方がなくて。だから、先輩の裏切りに気が付きませんでした」
私は冷たくそう言い放った。
切なげな表情は、驚きのものに変わる。
「オレの裏切り?それ、どういう意味……」
「やっぱり、こんなのおかしいんだって、早くから気づくべきでした。こんな夢みたいな事があるわけないと。だけど、何も見えなくなるくらい先輩の事が大好きだった。……私は期間限定の遊び相手だったんですよね?」
言いたくても言えなかった事。
震える手でこぶしをつくり、ギュッと力を入れた。