木曜日の貴公子と幸せなウソ
触れるだけのものじゃない、深いキス。
あまりの長さに、私は目を閉じた。
『萌、好きだよ……』
『忘れんな……』
甘い吐息が混ざり合う中、先輩の言葉が頭の中で響く。
やっと奥底にしまい込んだ気持ちだったのに、簡単に出てきてしまった。
そればかりか、キスがスイッチとなり、後から後から気持ちがあふれ出てくる。
抑え込もうとしてもきっともう無理。
「……オレの家、行く?」
何度目かのキスの後、先輩は私の額にコツンと自分の額を合わせて問いかけてきた。
目を伏せて私は口を開く。
「行……」
答えを出そうとした時だった。
今まで静かだった空間を切り裂くかのように、電子音が鳴り響いた。