木曜日の貴公子と幸せなウソ


こんなカン違い、有坂先生に迷惑だよ……。

しかも彼が好きなのは夏江だし。

声を大にして言いたいけれど、言えない。

……ああ、そうだ。

有坂先生の事も忘れていた。

夏江との食事をセッティングするつもりが……。


「本当に何もないし。たまたまだし」

「そう?じゃあ、悪いけど教材室に水色の色画用紙を取りに行ってくれる?」


疑いのまなざしで、夏江はそう言った。


「……うん」


時計をチラッと見ると、4時半を少し過ぎたところ。

先輩がエミちゃんをお迎えに来るのはまだ早い。

高校教師だって言っていたっけ……。

木曜日だけはこういう理由で早く戻ってきているのかな?


……いや、そういう事は私には関係のない事だし、どうでもいい。


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