木曜日の貴公子と幸せなウソ


私って、そんなに単純?

顔に出ないようにしてきたつもりなんだけど……。


「萌先生ーっ!」

「……えっ?」


可愛らしい女の子の声が聞こえて来て、ドキッとして振り返る。

とっさにホールの時計を確認してしまったくらい。

4時40分……。

お迎えにはまだ早いはずなのに、どうして?


「エ、エミちゃん……。今日は早いのね?」

「うん!くんちゃんが、早くお迎えに来てくれたの!」


ニコニコと嬉しそうに言うエミちゃん。

……くんちゃん?


「萌先生って、有坂先生と仲良しさんなの?」

「ハハハ。この幼稚園の先生たちは、みーんな仲良しさんだよ?」


エミちゃんの問いかけに、有坂先生はかがみこんで、ニコッと笑って答えた。

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