木曜日の貴公子と幸せなウソ


エミちゃんとも極力、顔を合わせないようにしていた。

自分のクラスの子じゃないし、顔を合わせない日が続いても、それは特に何の問題もない。

この子には何の罪もないのに、避けるような事をしてしまって、胸が痛い。

だけど、先輩の事を忘れるには、やっぱり関わらないほうがいいんだ……。


もしあの日。

エミちゃんが高熱を出さなかったら。

私はあのまま、間違いを犯してしまっていたはず。

不謹慎だけど、今思えば、エミちゃんが高熱を出してくれて本当によかった……。


「ところでお迎えは誰が来たの?」

「くんちゃんだよ。今、先生とお話してるの!」


有坂先生の問いかけに、エミちゃんは預かり保育の部屋の方を振り返る。

すると、ちょうど先輩が部屋から出て来て、先生に頭を下げた。

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