木曜日の貴公子と幸せなウソ
くんちゃん……?
エミちゃん、パパって呼んでいないの?
……そんな事ないよね。
だって折り紙の花をくれた時、パパと折ったって言っていたし。
先輩はこちらに気が付いて、不機嫌な表情を浮かべた。
「あー、有坂先生、私は仕事がありますのでこれでっ!エミちゃん、また明日ね」
「萌先生、さようならー!」
エミちゃんは笑顔いっぱいで私に手を振ってくれた。
私は頭を下げて、逃げるように慌てて階段を駆け下りる。
やっぱり職員室から出るんじゃなかった……。
「萌ー。水色の色画用紙はー?」
「え?……あ」
職員室に戻ると、夏江に言われた。
これでは何しに教材室へ行ったのか、わからない。
でも今、二階に上がれば、先輩と鉢合わせしてしまう。
「いいよ、私が取りに行くよ」
「あ、ありがと……」
「その代わり、ちゃーんと話してもらうからね?」
夏江はポンポンと私の肩をたたくと、代わりに職員室を出て行った。