木曜日の貴公子と幸せなウソ
「……待てよ」
グッと腕をつかまれて、元いた場所へと引き戻される。
……というよりも、行き過ぎて成瀬先輩の胸に頭が当たった。
「せ、せんぱい……?」
驚いて顔を上げると、さっきまであった困ったような笑顔はどこにもなかった。
怖い顔で私の腕をつかんで睨んでいる。
この人のこんな顔を初めて見た気がする。
いつもは、もっとふわふわっとした、あたたかい雰囲気だったから。
でも今はそのカケラはどこにもない。
「人がマジで告白してんのに、罰ゲームって何だよ?」
「……意味がわかりません」
「何が?」
「成瀬先輩が私に告白してくる意味です」
本当に罰ゲームじゃないのだろうか……?
困惑しながら言い返すと、成瀬先輩は私の腕から手をはなした。