木曜日の貴公子と幸せなウソ


門の前で立っているのはかなり目立つ。

だからって、近くにコンビニもないし、カフェだってファミレスだってない。

期待していないんだから、待たなければいいじゃない……。

私が待つ必要はどこにもないって、さっきから思っているのに。

でも、そこから動く事がなぜかできなかった。


……何をしているんだろう、私。


結局、その日。

何の連絡もなく、先輩は姿を見せる事はなかった……。




「……っくしょん」

「萌ー。大丈夫?顔が赤いけど、熱あるんじゃない?」


くしゃみをした私を心配そうに覗きこむ夏江。

私は鼻をかんだ後、マスクを装着して、大丈夫だというように手をあげる。

体調を崩しても簡単には休めない。

インフルエンザなど、感染症で出席停止になるような病気でない限りは……。

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