木曜日の貴公子と幸せなウソ


昨日、バカみたいに信じて寒い中待っていたせいだ。

頭はガンガンするし、寒気もする。

鼻は止まらないし喉の痛みもひどい。

もう二度と人なんか待ってやるものかと、強く決意した。

私はバカすぎた。

何を期待していたのだろう。


「無理だったらいいなよ?まだ明日もあるんだし」

「……ん」


正直、立っているのもツラい。

ボーっとするし。

でも、病は気からともいうし、ここは弱気になった者負け。

今日を乗り越えたら、明日は作品展。

月曜日は明日の振替で休みだし、しっかり頑張ろう。


「……夏江は昨日、有坂先生とどうだったの?」

「えっ?特に何もないよ。番号とアドレスを交換して、また夕飯行きましょうねって話をしただけ……」

「よかったね、本当に」


嬉しそうな夏江に、私はマスク越しに笑った。

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