木曜日の貴公子と幸せなウソ


片山さんのところに赤ちゃんが……。

もしかして、昨夜先輩が来なかったのはそのせい?


「そっかー!エミちゃんに会ったらおめでとうって言ってあげてね」

「うん!」


何とか笑顔でそう言うと、ユリちゃんは自分の事のように嬉しそうに笑って頷いた。


ああ、そっか……。

やっぱりそうだったんだ。

昨日、帰ればよかったのに、それでも帰れなかった理由。

私、先輩に会いたかったんだ……。

忘れよう忘れようと、必死に自分の気持ちを抑え込んでいたけれど、もうおさまらない所まできちゃっているんだ。


何でもない風に装っていても、心のどこかで先輩への想いが再燃する。

私、7年前から先輩の事を諦められずにいたんだ……。


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