木曜日の貴公子と幸せなウソ
「せんせー、どうしたの?目にゴミが入ったの?」
「……うん。でも、大丈夫だから」
じわじわと涙がごみあげてきて、不覚にも涙がこぼれてしまった。
目をこすっていると、ユリちゃんが心配そうな顔で私を見上げている。
「ごめんね。それじゃあトイレを済ませた人から、帽子をかぶって、外へ出ましょう!」
「はーい!」
悲しみを振り払うかのように明るい声で、子どもたちに言うと、私に負けずに明るい声で返事がきた。
トイレに行く子、帽子をかぶって教室を出て行く子。
「走っちゃだめよー?」
注意を呼びかけながら廊下に出ると、ちょうど中央玄関に制服姿のエミちゃんがいた。
「萌せんせー!エミの妹が生まれたんだよー!」
「エミちゃん、よかったね!エミちゃんもお姉ちゃんになったんだね……」
私に気づいた彼女が、嬉しそうに手を振りながら声をかけてきた。
ニコニコとしながらエミちゃんの元に寄ると、園長先生と話していた先輩がこちらに気が付いた。