木曜日の貴公子と幸せなウソ
本当のこと
頭がボーっとしている。
私、仕事中じゃなかったっけ……。
何で横になっているのだろう?
早く戻らないと、子どもたちが心配する……。
鉛のように重たい体。
動かしたくても動かない。
ぼんやりと白い天井を見つめた後、私はゆっくりと目を閉じた。
涙がこぼれる。
何の涙……?
「萌、気が付いたの?」
「……え?」
聞こえるはずのない声がして、閉じた目を再び開けた。
ゆっくりと顔を声がした方に向けると、仕切られたカーテンを開けて入ってきたのは、先輩だった。
成瀬邦章……。
今は片山邦章だっけ?
どうしてこんな所に?
奥さんが出産したばかりで、慌ただしいはずなのに……。