木曜日の貴公子と幸せなウソ
次々と語られる真相に、頭がクラクラしてくる。
……まさか、都合のいいように語っていないよね?
私が先輩のそばにいても、不倫じゃない?
本当に先輩は、独身……?
「先輩、あの、私は……」
「名前呼べよ。こういう時こそ、名前を使うべきだろ」
先輩……ううん、邦章はそう言って肩をすくめて笑った。
涙がじわじわと浮かんできて、視界がぼやける。
手を伸ばして邦章のシャツの袖をつかむと、彼は私を力いっぱい引き寄せた。
「萌、好きだよ……」
「ごめんなさい、邦章……」
「……そのタイミングで謝罪?オレ、フラれた事になるの?」
頭の上で、邦章はすねたような声を出した。
私は首を横に振る。
「じゃあ、萌からも言って。オレの事、どう思ってる?」
「……好き。7年前からずっと好き……」
顔をあげると、邦章は優しい笑顔をくれた。
7年前と変わらない、あたたかい笑顔を……。