木曜日の貴公子と幸せなウソ
「……邦章?」
「その顔、可愛すぎてヤバい。あんまり見るなよ。7年ぶりに好きだって言ってもらえて、すげーテンション上がってんだから」
クルッと背を向けながら、言う。
「……少しは大人になったと思ってた。でも、萌の前だと自分が自分でいられなくなるのは、高校生の時と一緒。すげーダサいだろ?」
「そんな事ない……。私もそうだから」
「……萌も?」
私の言葉に、邦章はチラッと少しだけ顔をこちらに向けた。
寝ながらだけど、私はコクリとうなずく。
「大人なんだから、大人っぽく振る舞わないとってずっと思ってた。邦章の事も、何でもないフリしてた。……でも頭の中ではわかっているのに、心がついていかない。ごまかす事はできなかった」
「……気持ちに大人も子どももないって事なんだな」
邦章はクスッと笑うと、もう一度ベッドに戻ってきて腰をかけた。
ギシッとスプリングが音をたてる。