木曜日の貴公子と幸せなウソ
成瀬先輩の事を好きな子はたくさんいる。
もしこの話が、そんな子の耳に入ったら……?
そう思ったら寒気がした。
「ごめんごめん。だって、今までどんなに告白されても誰とも付き合わなかった人だから、他校に彼女がいるんじゃないかって噂があったんだよね」
「……へー」
リサは声のトーンを落として、周りに聞こえないようにそう言った。
他校に彼女がいるという噂……。
その言葉に急激にテンションが下がっていく。
「あ、ごめん。噂は噂だね!だって、先輩は萌に告白してきたんだもん。自信持ちなよ」
「そ、そうだね……」
リサに背中をたたかれ、私はうなずいた。
「萌が成瀬先輩の彼女かー。何か私、すっごく嬉しい」
「どうして?」
「だって、憧れの成瀬先輩の彼女が自分の親友だなんて、すごい事だよ?だから嬉しいんだ」
フフフと口元をおさえてリサが笑う。