木曜日の貴公子と幸せなウソ
ケータイ電話に付けるストラップだ。
ビーズを組み合わせて作られていて、ライトに当たってキラキラと輝いている。
今持っているケータイには、ストラップが付いていない。
カバンに引っかけて切れてしまったのだ。
「……お揃いの買おうか?」
「……え?」
ストラップを見つめていたら、先輩が横から手を伸ばした。
驚いて先輩を見上げると、彼は目を細めて優しく微笑む。
「内緒でお揃いの付けるのもいいだろ?」
「……い、いいんですか?」
「いいよ。でも、敬語やめてね?」
「……あ」
敬語は禁止だって言われたのに、未だに敬語を使ってしまっている。
私が口をおさえると、成瀬先輩はクスッと笑った。
「それと、オレの事、名前で呼んでくれたらいいよ?」
「え?!名前で……?」
「そう。だって付き合ってるのに、距離があるみたいで嫌じゃん?」
先輩はそう言うと、ストラップを手に取った。