木曜日の貴公子と幸せなウソ


妹とかお姉さんじゃないの?

……って、口には出せなかった。

先輩のお母さんじゃないの?

……という冗談も言えなかった。


「見間違いとかじゃなくて?」

「……見たの、私だけじゃないみたい。あの日、結構みんな目撃したらしくて、噂がまわってる」


言いにくそうにしながらも、話してくれたリサ。

私は小さく何度もうなずく。


「本当、変な事言ってごめんね。一緒にいたって言っても、友達……にたまたま会ったのかもしれないし」

「……うん。教えてくれてありがとう。私は大丈夫だよ」


小さな不安が、じわじわと私の中で広がっていくのがわかった。

大丈夫……なんかじゃない。



実は、リサが話してくれるよりも前に、私も先輩が女の子と一緒にいるところを見てしまったんだ。


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