木曜日の貴公子と幸せなウソ


先輩にとって、私はちょうどいい素材だったのだろう。

先輩に告白してくる女の子じゃ、ムリだし。

逆に先輩に声をかけられて、舞い上がってしまう女の子でもダメ。

そう考えると私はそのどちらでもなかったから、ヒマつぶしの相手に選ばれたんだと思う。

結婚前の最後の遊び相手として……。


先輩の進路は早い段階で決まっていた。

彼の成績はトップクラスだし、勝手に大学に進学するものだとばかり思っていたけれど……。

本当はこういう理由で就職組だったかもしれない。

先輩は、どこに進むとかハッキリとは言わなかった。

今思えば、何かぼかしたような言い方だった。


よく考えれば、少しずつサインは出ていたのに。

先輩相手に本気になってしまった私の負けだ……。


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