木曜日の貴公子と幸せなウソ


お酒もそう。

ジュースみたいな甘いものしか飲めずにいる。

年齢を重ねても、理想のオトナには全然近づけない。


「でもさー、進路決めたのは先輩がきっかけじゃなかったっけ?」

「……うん、まあ」


別に先輩に言われたから、幼稚園の先生になったわけではない。

ただ、高校3年生になって進路を決める時に、何になっていいかわからなくて、とっさに選んだだけだし。


『萌の笑顔なら、子どもも笑顔になりそう。幼稚園の先生とか似合うよ』


あのセリフを真に受けたわけじゃない。

私だって子ども好きだし、ピアノだって昔、習っていたことがあったから弾けるし……って、自分にまた言い訳をしている。


先輩がもし、あの会話を覚えていたのなら、先輩のために幼稚園の先生になったと思われても仕方がないかも。


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