木曜日の貴公子と幸せなウソ


心配をかけたくなかったっていうのもあったけど、一番の理由は恥ずかしかったから。

遊ばれていたんだっていう事を知られたくなかったからだと思う。

だけど、リサは話を聞いて、本気で怒ってくれたし、一緒に泣いてくれた。

自分の事のように考えてくれたんだ。

だからこそ、高校を卒業して、お互い違う進路を歩んでも、こうした関係は続いている。

リサは今、私が好きだった文庫本の出版社で編集者として働いている。

かなりの激務で大変そうだけど、愚痴ひとつ言わずに働いているリサは本当にすごい。

やりたかった仕事だし、楽しいと言っていたけれど、本当に大変だと思う。

そんなリサに励まされたら、私も頑張らなきゃって思えてくるんだ……。




「萌先生、おはようございます!」

「あ、エミちゃん、おはよう」


連休が明けた月曜日。

エミちゃんは幼稚園の門をくぐって、走って来た。


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