木曜日の貴公子と幸せなウソ


「萌先生、おはようございます。すみません、うちの子が……」

「あ、おはようございます!」


エミちゃんを見送っていると、後ろから声をかけられた。

振り返るとそこにいたのは、お腹の大きいお母さん。

その人に、見覚えがあった。

今はフワフワロングではなく、セミロングのストレートだけど、間違いない。

7年前に先輩と一緒に赤ちゃん服のブランドのお店にいた人だ。

保護者証にはエミちゃんの名前。

この前、先輩が首からさげていたものと同じもの。

片山……さん。


「いえ!パパと一緒に折ったんだって、嬉しそうでした」

「なかなか主人と折り紙する時間がないので、本当に嬉しかったみたいです。木曜日に預かり保育で年長さんに教わって来たものらしくて」


エミちゃんのお母さんは、可愛らしく笑った。


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