木曜日の貴公子と幸せなウソ






「今朝、片山さんと話してたよね。珍しいね、萌先生」

「……え?」


園児が降園した後、自分のクラスの片づけをしていたら、隣のクラスから夏江が顔を出した。


「上に兄弟がいて、その子を受け持った事があるなら他の学年のお母さんと話すなんて珍しくないけど、エミちゃんち、今年引っ越して来たから、上の子はここの卒園生じゃないじゃん?」

「あ、そうなの?」

「うん、そう」


他の学年の事だし、知らなかった。


「んじゃ、知らなかった?木曜日の貴公子の存在」

「木曜日の……貴公子?」


何その少女マンガのタイトルみたいなの。

不思議に思いながら聞き返すと、夏江はフフッと笑った。


「木曜日、エミちゃんいつも預かり保育なんだけど、その時に迎えに来る人がすっごいイケメンなの」


イケメン……。

夏江の言葉に、とっさに頭に浮かんだのは、成瀬先輩だった。


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