木曜日の貴公子と幸せなウソ
やっぱり誰が見てもイケメンなんだ。
高校の時と比べて、彼はすごくオトナっぽくなった。
私なんか全然成長していないというのに。
「イケメン……なら、この前の木曜日に会ったよ」
「そう!その人!私も見た事あるけど、本当にカッコいいよね。とても子持ちには見えない」
夏江が少し頬を紅潮させて、興奮気味に話す。
……うん、本当にそう思うよ。
「あ、ゴメンね。ホチキス借りに来たんだった」
「あ、はい」
ピアノの上に置いてあったホチキスを夏江に手渡す。
彼女は急ぎ足でクラスを出て行った。
木曜日の貴公子……だって。
そんなあだ名が先生たちの間でついているなんて。