木曜日の貴公子と幸せなウソ
何が貴公子よ……。
木曜日にしか現れないっていうのなら、木曜日はこのクラスか職員室にこもっていればいいわけだし。
行事も運動会が終わってしまった後でよかった。
気が付いたのが、最近で本当によかった……。
「萌センセ」
「……え?」
仕事が終わって、幼稚園を出たら6時半を過ぎていた。
バス通勤の夏江と別れた後、駅に向かって歩いていた私。
声をかけられたかと思ったら、後ろから腕をつかまれた。
振り返って私はギョッとする。
「萌センセ。今、帰り?」
「……」
目の前にいたのはスーツ姿の先輩。
成瀬先輩……じゃなくて、今は片山先輩と呼べばいいのだろうか?