木曜日の貴公子と幸せなウソ
こげ茶色のサラサラとした髪に、端整な顔立ち。
シルバーの細いフレームのメガネがよく似合っている。
細身で長身。
この幼稚園に出入りするには少し場違いかもしれない。
もちろん、悪い意味でなくいい意味で。
「あの……?」
「覚えてないの?……まあ、そうだよな。フッた過去の男の事は覚えてないか」
フッた過去の男の事は覚えていない?
私はこのようなイケメンをフッた記憶ないんですけど。
「あの、どなたかと間違えてないんですか?」
「ハハハ。可愛い顔して結構、残酷な事言うね」
いや、マジでわからないんだけど。
目の前の彼は、乾いた笑い声をさせた後、メガネを外した。
「成瀬邦章。忘れたとは言わせない」
なるせ……くにあき。