木曜日の貴公子と幸せなウソ
制御できない
どこをどう走っているのかわからなかった。
だけど、段々見覚えのある街並みが車の外を流れ始める。
「懐かしいな。高校の通学路」
「……そうですね」
ああ、やっぱり……。
卒業してから、一度も来た事がなかった高校。
5年もたてば、街並みは少し変化する。
「オレが卒業してから、学校の前にコンビニできたんだろ?」
「……多分」
「ああ、そういや、萌は卒業式の予行と当日は欠席してたんだっけ?何で?」
「……」
爽やかな顔して、鋭いナイフで刺すような事を言う先輩。
もちろん、先輩に会いたくなかったから。
「熱……出たんだと思います」
「へぇー?ずいぶん都合のいい発熱だね」
私の答えに、先輩はアハハと笑った。