木曜日の貴公子と幸せなウソ
柱の影……。
この状況で、高校の時に先輩と入ったカフェの事を思い出してしまった。
誰かからの電話を受け、途中で行ってしまったあの日。
それで、駅ビルの子供服売り場で先輩と妊婦さんの姿を見たんだっけ。
それが奥様の片山さん……。
先輩も私も、今日のおススメコースを注文した。
メニュー表を閉じると、先輩は私に視線を向ける。
「しかし、萌が幼稚園の先生に本当になっているとは思わなかった。オレが言ったから?」
「……別に。高校3年の時、進路に悩んで、この道に決めただけです。私、ピアノ弾けましたし」
先輩に勧められたからじゃない。
彼からしたら、そうにしか見えないだろうけれど。
「でもオレの言った通り、萌は幼稚園の先生にピッタリだ」
「それはどうも」
運ばれてきた水をグッと飲む私。
胸のあたりがモヤモヤするのを掻き消すかのように。