木曜日の貴公子と幸せなウソ


ああもう……。

力を抜いたらきっと涙が出てしまう。

絶対にこの人の前では泣きたくない。

7年前だって、ガマンしたんだから……。




「……すみません。ごちそうさまでした」

「気にすんな。誘ったのはオレの方だし」


食事を終えた後、お店から出て私は先輩に頭を下げた。

自分の分を払うと言ったにもかかわらず、聞き入れてもらえなかった。

こんな風に借りを作る形は嫌なんだけど。


「おごってもらっておいてなんですけど、今後はもう接触して来ないで下さいね」

「それ、萌が言える立場?7年前、あんな酷い振り方しておいて」

「……は?」


先輩が車のロックを解除すると、私の方に向き直った。

あんな酷い振り方?


そうしたのは、あなたの方でしょう?


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