木曜日の貴公子と幸せなウソ
「何を言ってんの?それはこっちのセリフ……」
思わずカッとなって言い返そうと思ったけれど、途中で口をつぐんだ。
今さら、先輩を責めたところで7年前の時間に戻れるわけではないのだ。
先輩は、ヒマつぶし相手だった私が自分の意に反した事に腹をたてているだけだろう。
自分の方が優位に立っていたはずなのに、裏切られた。
それが許せなくて仕方がないのかもしれない。
どうやってこの場を切り抜けたらオトナなのか、必死に頭の中で考えていたら、先輩がフッと笑った。
「……そういう困った顔をすると、意地悪したくなる」
「い、意地悪って……」
「7年前、何も言わずに関係を切られたささやかな復讐ってやつ」
先輩はそう言って、助手席を指さして、自分は運転席に乗り込んだ。