木曜日の貴公子と幸せなウソ


「萌、大丈夫?顔色よくないけど……」

「え?あ、うん。平気平気。しっかりしないとね」


夏江に言われて、私は慌てて笑顔を作った。

机の上のペン立てには、昨日エミちゃんからもらった折り紙の花が挿してある。

それを見て、胸がチクチクと痛みだした。


エミちゃんが嬉しそうな顔で、先輩と一緒に折り紙をする光景が目に浮かぶ。

その先輩が昨日、私にキスをした。

この時点で、すでに私もエミちゃんを裏切っている事に変わりないんだよね……?




パスケースが見つからないまま、先輩がエミちゃんのお迎えに必ず来る木曜日になった。

この三日間、気が気でなかったけれど、片山さんに会っても笑顔で挨拶をされるだけで、特に何も言われなかった。

先輩の車に乗っていないのか、それともただ単に落とした場所が先輩の車の中じゃなかったというだけなのかもしれないけれど。



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