木曜日の貴公子と幸せなウソ
「クリスマスって言えば、私、彼氏と別れたからクリスマス1人なんだよね」
「えー!美雪先生、彼氏さんと上手くいってたんじゃないんですか?」
「他にも女がいたの!一気に冷めてその場で別れた」
美雪先生の『他にも女が』のフレーズで、私はドキッとして上っていた階段を踏み外しそうになった。
「今思い出しても腹立つー。一般企業と違って、幼稚園は職場恋愛なんてないから、どこで出会えばいいのよー」
「出入りする異性はみんな保護者ですもんね。不倫するわけにいかないですし」
私、今かなりヤバい顔をしている気がする。
顔色とか蒼白になっていないかな?
でも、私はキスはしたけれど、不倫をしているわけではない。
……そんな話をしても、誰も納得はしないか。
「いるじゃないですか、1人」
「え?」
「有坂先生」
夏江の言葉に美雪先生がプッと吹き出した。