私のパートナー


ガヤガヤと会社の披露室にはたくさんの人が集まり始めていた。


各会社の代表や、メディア。
新薬発表会への期待は膨らんでいる。


「毎年、亀沢製薬の発表会には素敵な贈り物がでるからねぇ。今年はなんだろうか…」


どこからかそんな言葉が聞こえる。


…毎年素敵な贈り物がでる…かぁ…。

一哉さんの言っていた意味がよくわかる。

贈り物1つで会の印象が上がる。
それを楽しみにしてくれる人がいる。

そこから会話が広がって
協力者が増える。

応援してくれる人が多くなるんだ…。



マカロンの届く予定が12時。

新薬発表会は10時から。
2時間の発表会だから…ギリギリ間に合うかどーか…。


お願い、間に合って…。




舞台袖で会場の様子を見ていると
後ろから声がする。


「なに、緊張してんのか?」


「っ、一哉さん…いや…人が…いっぱいいて…。」


「それ、緊張って言うんだろ(笑)」


「そ、そうかも…」


「お前が緊張してどーすんだよ。発表するのは俺と担当者だぞ?お前は袖で見てるだけだろ。」


「っ…でも…。」


「いつまで心配してんだ、アホ。いつもみたいに笑っとけ。お前がしゅんとしてるとこっちにまで移る。」


「…。」

そー言われてもね…
心配よ!
マカロン届かなかったら…多くの人をガッカリさせる。

一哉さんを信じてるけど
こればっかりは一哉さんが時間を止める力でもないと…


パコッ!

突然頭を叩かれる。

「ちょっ、なにすんですか!」

「ずっとその顔してたら次は顔面狙うぞ。」

「なっ、…それはやめてくださいっ!」


「だったらその顔やめろ。何度言わせるんだ、心配するな。」


「…はい。」

そろそろ発表会が始まる時刻…。

始まるんだ。


「…じゃ、行ってくる。お前は外でマカロン待ってろ。」


「はい。」


言われた通り外に向かおうとした時。

「菜央。」

またもや突然名前を呼ばれる。


私は…これに弱い。

振り向いて彼を見つめる。


「…マカロン余ったら2人で食べような。」


!!
反則…。


2人で

なんて言うから…。


私は顔を赤くして急いで会場の外へ向かった。




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