私のパートナー
緑の芽生え
私の足は大学時代に行きつけだったオシャレな女性向きの居酒屋さん。
大学時代は通いつめてお店のオーナーとその娘さんと仲良くなっていた。
「いらっしゃいま…ってうぉぉお!菜央じゃん!久しぶり。」
店に入るなり声をかけられたのは
お店の娘さんの桃香さん。
「桃香さん!お久しぶりです!ご無沙汰してます…」
「もぉー、卒業したらなかなか来てくれないから寂しかったのよ?あっ!今日菜央の指定席空いてるからー!」
「あ、本当ー?じゃ、久しぶりに座ろうかな…」
案内されたのは私の昔からの指定席。
カウンターの端でオーナーとおしゃべり出来る場所。
「ふぅー…」
「おっ!菜央ちゃん!いらっしゃい!」
声をかけてくれたのはオーナーの渡辺宏さん。
桃香さんのお父さんですっごく気さくな人。
「お久しぶりです!今日は仕事が早く終わったので来ちゃいましたーー!」
「おぉ、じゃー、美味しいものたくさん食べてけっ!今用意するからな!」
「はいっ!」
大学時代はいつも相談に乗ってもらってたっけ…。
「それにしても菜央、なんか変わったね!」
「えっ?そうかな…??」
「うん!絶対変わったよ…可愛くなった!」
「か、可愛くはない!」
「いやぁー?さては…恋でもしたな??」
こっ、恋??
「しっ、してないしてない!!」
「怪しい〜!」
「も、桃香さんこそ!どーなんですか?」
「あっ、それがねー…」
桃香さんはパッと左手を見せる。
薬指には金色の指輪がはまっていた。
「きゃぁぁあ!!桃香さんおめでとう!!!!」
「ありがとーー!つい、この前プロポーズされたのぉ!」
「ってことは…このお店出ちゃうんですか??」
「ううん。やめないよ。彼もやめなくていいって言ってくれてるし!」
うわぁ、なんか羨ましい。
私なんか…彼氏もいないけど…。
「き、きっかけって何ですか?その人を好きになった…」
「んー。きっかけ…は…ないかな!」
え???
「きっかけないんですか??」
「うん。なんか…気づいたら側にいて…それが当たり前で…それが好きだったんだよねー…。」
「当たり前…」
「その人の一言にドキドキしたり、あと仕草とか!その人のことで一喜一憂したりさー…」
ドキドキしたり…
一喜一憂したり…
「振り回されたこともあったけど、それも愛おしいんだよね。」
桃香さんの言葉が胸にくる。
「菜央にもそーゆー人いないの?」
その一言に息がつまる。