私のパートナー
赤い果実
【Kazuya side】
正直、一刻も早くこの会食から抜け出したい。
早くも4時間あまり 亀沢一哉代表取締役 を演じているんだ…
疲れる。
さっさとホテルに戻って 菜央の顔が見たいな。
…。
相当重症だな、俺は。
会社を立ち上げてから 順調に軌道にのり、ここまで来ていて
毎年秘書を変えるのは事実だ。
だけど…
今年の秘書は違う。
あれは確か…菜央がまだ大学生のころ。
俺は研究発表会に呼ばれて菜央の大学を訪ねていた。
まだ亀沢製薬が有名になる前のことで
俺自身が今のような有名人扱いもされてない頃。
研究発表会の受付を担当してた
水上 というネームプレートを付けた女に…
一目惚れした。
自分でも呆れるが…。
整った顔、華奢な体。
思った通りの透き通った声。
何と言っても…
あの笑顔。
欲しい。
そう素直に思った…。
…だけど大学生を勧誘するほどの勇気はなく…。
まぁ…。
一度きりの出会いだと思っていた。
今年の入社試験までは…。