モヒカンエイリアン
「なにしてん?」
案の定、モヒカンが覗く。
「ちゃんと並べて言わなあかんやろ」
「うるさい」
「しかも、振り込み、三件目やで。一件したらまた後ろに並ぶのが常識やろ?」
「だからうるさい」
黙っててくれ。
そんなこと、エイリアンのお前に言われなくてもわかってる。だいたい、ATMマナーに詳しいエイリアンてなんなの?
それでも男は構わずに振り込みをし続けている。
後ろから聞こえる、これ見よがしの咳払いは、まるでぼくに向けられているかのよう。
いらいらが背中を刺す。
ぼくのせいじゃないのに。
ぼくは悪くない…。
と、声高々と叫ぶ勇気も、列から離れる度胸もない。
なにも持ち合わせていない。
ただ早く時が過ぎさればそれでいい。
「根性なしやの」
たとえエイリアンにバカにされても。
それからも男は、ATMを占拠し、ぼくを板ばさみにした挙句。
「鈍臭い男じゃ」
ボソリと呟いて、ようやくATMは解放された。
急いで振り込み、誰と視線を交わすこともなく郵便局を出た。
ちょうど、あの男がハデなアメ車のエンジンをかけるところ。