モヒカンエイリアン
「ちょっと待ちなさい」
そう声がかかったと同時に、ぼくは手首を掴まれて振り返った。
「少しいいかしら?」
「はぁ」
「まだ会計が済んでないもの、持ってるわね?」
「えっ…」
ぼくは慌てた。
まさか未払いのものを、間違って持ってきてしまったかと思ったからだ。
スーパーの袋を確認する。
ぼくは万引きなんてしたことがない。正直、する度胸もない。だから心外でもある。万引き犯と間違われたことが。
袋の中は、すべてレジを通過している。
きっとこの女性の勘違いだろう。胸を張って女性と向き合ったその胸を、指差している。
「ずっと独り言ばかり言って、おかしいと思ってたの。その胸ポケットの中身を出しなさい」
「これは…」
「ほら、出せないんじゃないの。やっぱり盗んだのね⁉」
「これはぼくのです。盗んでません」
「じゃ、お見せなさい‼」
女の手が、胸ポケットに。中から、モヒリアンを引っつかみ出した。
モヒリアンは、ピクリとも動かない。