モヒカンエイリアン
「な、なにこれ、気持ち悪い」
「だからぼくのです」
返してください、と手を伸ばす。
「どうやらそのようね。こんなものスーパーに置いてないもの。ほんと気持ち悪い」
女は謝罪するでもなく、ぼくの手にモヒリアンを突き返すと、スーパーの中に戻っていった。
ここは、抗議すべきだろうか?
思わず手の中を見下ろす。
確かに、人形ではない、生きているジッとり感が手から伝わってきて、気持ち悪い。
でもだからって、あんな言い方。
そうだ、やっぱり謝ってもらおう‼
勇んで中に戻ろうとしたぼくを___。
「もう、ええやん」
「けど…」
「まさる、お前のその気持ちだけで充分や。わしの怒りも消えてもうた。びっくりするくらい、無の境地や」
「ならいいけど」
「はよう、そのお胸に入れてくれ。帰ってなんか食お」
神妙に言うモヒリアンを胸におさめ、ぼくはチャリにまたがって、スーパーに背を向けた。
しばらくペダルを漕いだだろうか。