モヒカンエイリアン
「離婚の理由?」
再びリビングで、お母さんとお父さんは顔を見合わせて困った顔をした。
「ちゃんと教えてほしい」
ぼくは2人を見て訴える。
お母さん、老けたな。お父さん、こんな顔してたんだ。ぼくも将来、こんな顔になるんだろう。いくら嫌だとしても。
「まだ、まさるは子供だから」
「そうだ。そんなことより勉強しなさい」
その時、なんだか分かった気がした。
ぼくの淡い期待は間違いなのだと。
もう一度、三人で仲良く、とまではいかないけど、一つ屋根の下に当たり前に暮らす昨日には、戻れないのだと。
それならぼくは子供じゃなくてもいい。
早く、早く大人になりたい。
ぼくは、胸ポケットを軽く叩いた。
お母さんはため息をついてキッチンでお茶をいれている。お父さんは新聞を読みながら、ぼくをうかがう。
もう一度、ポケットを叩いた。
胸元から、静かな寝息が聞こえるので、思いっきり叩くと、ムギっ‼と変な声がした。
見下ろすと、見上げたモヒリアンと目が合う。
その目はこう言っている。
ホンマに、ええんか?
ぼくが一つ頷いた時、お母さんがお茶を持ってきた。
会話はない。
けれど、心の会話が始まったのだ。