モヒカンエイリアン


「ここか⁈ここか半蔵⁉ここなんか⁇」


モヒリアンが半蔵のシッポのあたりを引っ掻く。


「黒やさかい見えへんねん。今だけ白に染めたらアカンか?ノミの野郎が見るように。あっ‼飛びよった‼わしの体に、ああっ‼痒い‼痒い痒い痒い‼」


ぼくは目の前で、ぐるぐると回るモヒリアンを黙って見下ろした。


しばらく回っていたが、そのうち半蔵がくわえてどっか行った。


よっぽど半蔵のほうが空気読めるよ。


足元から、生活がひっくり返る。のほほんと生きていくことも出来ないんだ。何事もなかったようになんて、ぼくにはできない。


両親の、心の声を聞いてしまった今は。


ぼくは、お荷物なんだ。大した目標もないのに大学受験にお金がかかり、それさえ落ちたらどうする?


平穏無事に続くと思っていた未来。


そうだ、明日にはうさぎが天からプレスしてくるかもわからない。


わからないからこそ…。


「いっそ、消してしまうか?」


悪魔の声が、肩から聞こえる。


「なにもかも、消してしまうか?」


「なにもかも…」


「嫌なこと辛いこと面倒なこと、なにもかもや。綺麗さっぱり消し去ってしまえばええ。一日、ゆっくり考えや」


なにもかも…。


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