モヒカンエイリアン
なんだ?なんだなんだ⁇
誰かが、ゴキブリホイホイの中で暴れている。
だって、ゴキブリ、一匹も捕まってないのに。
「はよなんとかせんかい‼このネバっとしたやつ、この、取れやへんし、あ、肘までいってもうた‼なんかワシ、悪ないのに土下座しとるみたいやんけ‼」
罵詈雑言を撒き散らす…虫?じゃないか。
白くて目みたいなんが黒くて、小さいウルトラマンみたいだけど、ホイホイから出る力はないらしい。
てか、めっちゃ気持ち悪い…。
ぼくは咄嗟に、机の上の辞書を取り、天高く振り上げた。
ビシャ‼
と、いけばいい。ビシャ‼と。
これは見てはダメな類のやつだ。見なかった、聞かなかったことにしよう。きっと、流れに乗った受験で疲れてるんだ。
そうだそうだ。
良心の呵責を無理やり押し込み、辞書をビシャ‼っと…。
「おいマサル、ホンマにええんか?」
ぼくの手がピタリと止まる。
「その辞書、叩きつけた瞬間、夢が現実になんねんで。マサルが見た、あの夢がな」
「…」
「そんでもええんやった____」
ビシャ‼
ぼくは辞書を思いっくそ叩きつけた。