モヒカンエイリアン


みゆきさんの寂しげな横顔。


オーナーはこのパンケーキ屋を開業するにあたり、融資を受けた。経営も順調で返済も滞ることはなかったが。


「一括で返済するよう銀行に言われたの」


災害時による、一括返済。


「そんな、普通なら返済しなくてもいいんじゃ?」


「その逆だったの。銀行は返せの一点張りで。契約をちゃんと読んでなかったのも悪いって。それに…」


「それに?」


「お客さん、減ったしね」


こんな時だもの、と、みゆきさんは遠くを見た。


こんな時だからこそ‼


甘い夢が詰まったパンケーキを振舞うべきじゃないのか。


もちもちのパンケーキを口に入れると、自然と笑顔になるんだ。


嫌なことも忘れることができる。


また頑張れるんじゃないか‼


ぼくは訴えたが、言葉にすることはなかった。


これが現状なんだ。


隣町や学校破壊の余波は、確実に広がっている。


無関係だと思った、ぼくのところにも。


「まさる、どこ行くねん⁉」


ポケットを揺らし、ぼくが向かった先は銀行。


ムリだと分かってても、なんとかならないものか…。


「子供には関係ない。帰りなさい」


門前払いされた。


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