モヒカンエイリアン
銀行がなくなれば、お店、辞めなくてもいい。
銀行さえなくなれば。
「まさる、まさるがそうしたいんやったら、簡単な話や。いつも栗もろて下宿させてもらってるさかいな、まさるが思うようにしたらええ」
なぜだか、もっひーの声がいつもと違う。
いつもと違うところに聞こえてくる。
ぼくの。
心に。
「せやけど、よう考えや。あのいけすかん銀行員、路頭に迷うんやで。子供もおるやろ。年の頃からしたら、大学受験や。もう合格したかわからんけど、仕送りはなくなるわけや。えらいことや」
じゃ。
どうして。
町を破壊したの?
スーパーを、学校を、隣町を。
どうして…。
「まさる、ほんまにええんか?」
問いかけは、ぼくの心に届く。
出口を求めて彷徨っている、ぼくの平凡なココロ。
「とりあえず全員、銀行から出したほうがええな」
「ぼくがSUNDERで追い払おうか?」
「せやな。たまには役に立つな。ほな軽めのやつ頼むわ」
頷いたアフロリアンが右手を上げた。
その右手を。
ぼくはソッと掴んだ。
「帰ろう」
自転車に乗って引き返した。
家に着くまでの間、誰も口をきかなかった。