モヒカンエイリアン
…すごいリアルな夢だったな。
枕元の携帯を見ると、まだ日付が変わったばかり。
ぼくはベッドから出ると、一階のキッチンで冷たいミネラルウォーターを飲んだ。
夏休みとはいえ、明日は塾の夏期講習がある。
受験だから仕方がない。なにがしたいわけではないのに、受験は避けて通れない。
とりあえず大学に、だ。とりあえず。
冷蔵庫を閉めて二階に戻ると、なにか悲鳴じみた小さな声が聞こえた。
「虫?」
鈴虫の鳴き声にしては、心が癒されないというか、こう、ギスギスしたような。
それが喋り声、しかも非難めいた負の声と気づいたぼくの目は、部屋の片隅を見つめる。
そこに鎮座する、この季節なら珍しくない、あるモノ。
恐る恐る近づくと、声は、少しずつ明瞭化されていく。
それとともに、湧き上がる吐き気。
だってそうだろ?
いくらあいつらが、ぼくたちより遥か以前から生まれていたからって、動きが歪(いびつ)だからって、喋るわけが…。
ぼくは屈んだ。
屈んで、覗き込んだ。
そう。
ゴキブリホイホイを。