ちっぽけな距離
指名した訳
side 梓

「ごめんっ、霜月君っ‼︎」
「え⁇」
「今日、委員会だった‼︎」

今は霜月君と図書室にいる。

なんでかって⁇

勉強を教えてもらうためだよ。

「えっ、嘘。やばくね‼︎⁇」
「うー、とりあえず私、京君が待ってるから、行くね」
「おうっ、頑張ってな」
「ありがとー、あのさ、また今度もいいかな」

私は霜月君に言う。

すると霜月君は少し驚いた表情を見せ、それから私に

「いいよ」

と、優しく微笑んだ。

私は急いで京君のところに向かう。

京君、怒ってるよね。

一緒になって怒られるのかな。

はあ…本当私ってだめだな…。

なんで私…保健委員なんて…。


あれは入学式からすぐの出来事だった。

私達は元々、同じ学校に通う予定で入試を受けた。

それはお互いの理由が家から近いということから。

それ以外はなにもない。

『じゃあ保健委員になってもいって奴いるー⁇』

と、先生は呼びかける。

正直私にとってはこんな時間、どうだっていいと思ってた。

委員会に入らないし、推薦もされないだろうと思い。

だけどそれは違った。

保健委員だけは、なぜかなかなか決まらず。

『誰かいない⁇決まらなかったら放課後も…』

って、先生が言いかけた時。

『先生。推薦良いですか』

と、京君が手を上げてそう言った。

京君、こんな手を上げたり注目を浴びるようなキャラじゃないよ⁇

私はただびっくりしたんだ。

『推薦か。良いけど、勿論まず京が入るんだよね⁇』

と、先生は言う。

『…良いけど、その代わり俺が女子を誰か指名しますよ』
『それならよろしい。で、誰を指名するの⁇』

そう先生は言う。

そんな中、少しだけ女の子がガヤガヤし始めた。

なんだ、皆結局選んで欲しいのか。

だったら選ばれる前に保健委員に入っとけばよか…

『水樹梓』
『…へっ‼︎』

私の名前が呼ばれたので無意識に返事をした。

『保健委員、やれよ』

…な…。

だけど断れなくって。

それは私が京君の事が好きだからで。

でもまさか、京君に選ばれるなんて…。

私は嫌々より、ただ京君が私を選んでくれた事に嬉しかった。

『大丈夫⁇』

先生は笑って言う。

『あっ、はい。頑張ります…』

私がそう言った時、勿論女の子達の評判は悪かった。
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