アルマクと幻夜の月
第一夜 こそどろ姫とランプの魔人
1
*第一夜 こそどろ姫とランプの魔人
1*
厨房は喧騒と熱気が渦巻いていた。
火のそばでは料理番が額に汗を浮かべて肉を焼き、給女たちは大きな器に色とりどりの果物を盛り付けている。
食材を運ぶ下働きのあわただしい足音。
指示を出す給仕長の怒号。
その、隅。
ナツメヤシ酒で満たされた大きな壺の陰に隠れる、少女の姿があった。
年の頃は十六。
頭の高い位置で一つに縛った漆黒の髪は腰に届くほど長く、絹糸のように艶やかだ。
健康的に日焼けした肌は陶器のようになめらかで、その金の瞳は満月のように輝いている。
その名をアスラ・アルマク。アルマク王朝の第一王女その人である。
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厨房は喧騒と熱気が渦巻いていた。
火のそばでは料理番が額に汗を浮かべて肉を焼き、給女たちは大きな器に色とりどりの果物を盛り付けている。
食材を運ぶ下働きのあわただしい足音。
指示を出す給仕長の怒号。
その、隅。
ナツメヤシ酒で満たされた大きな壺の陰に隠れる、少女の姿があった。
年の頃は十六。
頭の高い位置で一つに縛った漆黒の髪は腰に届くほど長く、絹糸のように艶やかだ。
健康的に日焼けした肌は陶器のようになめらかで、その金の瞳は満月のように輝いている。
その名をアスラ・アルマク。アルマク王朝の第一王女その人である。
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