アルマクと幻夜の月
「……帰る場所なんて、ないじゃないか」
ナズリのいない王宮に、アスラの場所など。
ルトが隣で息を呑んだ。
ルトが何も言えないでいる、その事実が、王宮にアスラの居場所などないことを肯定しているようで、
アスラはいたたまれない気分になる。
アスラは次第に冷たくなっていくナズリを見下ろして、唇を噛んだ。
――そのとき。
バサバサと耳元で音がして、ふいに、アスラの肩に小さな重みが乗った。
「……イフリート」
肩の小鳥を見て呟いたアスラに、ルトが何事かと顔を上げる。