アルマクと幻夜の月



「……帰る場所なんて、ないじゃないか」


ナズリのいない王宮に、アスラの場所など。


ルトが隣で息を呑んだ。

ルトが何も言えないでいる、その事実が、王宮にアスラの居場所などないことを肯定しているようで、

アスラはいたたまれない気分になる。


アスラは次第に冷たくなっていくナズリを見下ろして、唇を噛んだ。

――そのとき。


バサバサと耳元で音がして、ふいに、アスラの肩に小さな重みが乗った。


「……イフリート」


肩の小鳥を見て呟いたアスラに、ルトが何事かと顔を上げる。


< 103 / 282 >

この作品をシェア

pagetop