アルマクと幻夜の月
「イフリート、母上は、あたしに生きろと言ったんだ」
小さな声で小鳥に語りかけるアスラを、訝しげに見ていたルトの瞳は、アスラの眼に光が宿るのを見た。
「……姫様、どうされたんですか?」
尋ねたルトにアスラは答えず、微笑みを返す。そして。
「イフリート、人型に戻れ」
短い言葉と、一瞬の閃光。
突然の光に、ルトはもちろん、その場にいた誰もが見ている真ん中に。
その、黒く美しい男は現れた。
「イフリート、おまえの主人はあたし。そうだろ?」