アルマクと幻夜の月
格好つけてみたはいいが、結局は一人じゃ心細いだけだ。
こんな頼りない主人に、あたしなら絶対ついて行きたくないな、とアスラは自嘲した。
けれど。
「聞き届けた、我が主」
イフリートは笑わなかった。
ただ真摯に、まっすぐに、その声は夜闇を裂いてアスラの心に暖かく灯る。
「言われなくてもそのつもりだった。忠誠を誓うと、言ったはずだ。……アスラ」
低い声が、初めてアスラの名を呼んだ。
馬のたてがみに雫が一滴、落ちる。
「どこへ、行きたい」