アルマクと幻夜の月
イフリートの言葉に、アスラの頬がさっと朱に染まった。
それを隠すために、アスラはますます深く枕に顔を埋める。
そうなのだ。
宿に着く前に王宮から持ってきた諸々を売り払ってきたので、今のところは金に余裕がある。
だが、それがいつまで保つかはわからないので、節約するに越したことはない。
そこで、宿代を浮かせるためにイフリートを一時的にネズミに変え、一人部屋を借りたのだ。
だが、寝ている間もネズミにさせておくわけにはいかない。
アスラだってできることなら床で寝たくはないし、イフリートは、アスラが命じればそうするだろうが、それも可哀想な話だ。
結局、イフリートの「安心しろ。誰もこんなちんちくりんに手など出さん」の一言で、一人用の寝台に二人で寝ることになった。
――のだが。