アルマクと幻夜の月
(……やっぱりあたし、床で寝ようか……)
何も起こらないとはいえ、人間と呼べるかあやしいとはいえ、男と同衾することに変わりはない。
床の寝心地は良くないだろうが、ベッドで寝ても緊張で眠れなければ意味はない。
「こ、この服……」
話を変えようと思って、アスラは唐突に言った。
「勢いでドレスのまま王宮を出てきちゃったけど、売れるかな? いい生地を使ってはいるだろうけど、砂で汚れてボロボロだし」
「まぁ、高値ではなくとも買い手はあるだろう。それを売って、どこかで安い庶民らしい服でも買え。いつまでもそんな高価なものを着ていたらカモにされるぞ」
「そうだな。……よし、善は急げだ。町へ行こう」